Adobe Typekit単体プランをそのままにしていた。

デザインの仕事をするには、事実上adobeという会社のソフトを使う必要がある。脱adobeということでそのあたりには触れたが、DTPをするにはillustrator、画像の加工にはPhotoshopがスタンダードだ。高機能で使いやすい、という理由も無いでは無いが、「これらのソフトでしか作成できない形式」での納品を求められることが多いため、デザイナーは使わざるを得ないのだ。
特にDTPは、印刷時に万が一、一箇所でも文字化けや色化けなどが起こってはいけないから、他のソフトを使うことが難しい。Affinity Designerなどは機能的にillustrarorを代替できるし、価格も安いのだが、イラスト作成作業は問題なくても納品ファイルはillustratorでトンボをつけてアウトラインかけて…ということになってしまう。

そのAdobeのソフトを購入するには、現在サブスクリプションという方法しかない。昔は、売り切り買い切りの形だったので、高額(セットで10数万円だったかな?)ではあったものの、一度変えばあとは、数年から10年に一度くらいのバージョンアップ版の購入で済んだ。それが、今は全部込みの年間プランで5,680円/月、65,760円/年が必要になる。仕事の経費だからそのくらい…とも思うが、安く済むなら安くあげたい。
ということで、illustratorとPhotoshopはまだCS5を使い続けている。現状はまだなにも問題はない。まだ購入したのも2012年ごろのことだから、まだ全面買い替えには早い。

しかしながら、部分的にAdobeCCのコンテンツを利用している。フォント関係の「Typekit」の単体プランの契約を去年していた。
モリサワのOpentype書体は商売でDTPをするには必要なため、すでに持っている。が、それだけだとチラシや化粧箱のデザインの仕事のときに足りないことがある。
Webで配布されてるフリーフォントにも面白いものはいくつかあるが、正直、クオリティの問題で商用には使えない。一文字一文字のデザインは秀逸だが、文字組みをしたときにバランスが悪い。モリサワやタイプバンクなどは、写植時代からのフォントメーカーで、そのあたりの心配はない。モリサワについては日本語DTPではスタンダードな存在なので、クオリティ以前に持っていないと商売にならないという事情もある。

で、Adobeのサービスらしく、Typekitには使えそうなフォントがいくつかあった。単体プランは年間5000円弱だったが、契約した。この値段なら安い。
…のだが、ほどなくTypekitは「Adobe Fonts」にアップデートされ、サービス内容が良くなったかわりに単体プランが無くなってしまった。AdobeCCの何らかのプランで契約しないとフォントが使えなくなってしまうのだ。とりあえず、一年間は単体プラン契約は保持されるが、そのあとどうしようか…と思いつつ忘れていた。

で、今日思うところがあってAdobeのアカウント情報を見てみたのだ。すると、Typekitの契約についての情報はどこにもなかった。そのかわり、契約した覚えのない「Adobe XD」というソフトの年間プラン(15,292  / 年)の情報が出ていた。AdobeXDというのは、UIデザインのソフトのようだ(今日はじめて知った)。そういう案件はまだやったことがないので、面白そうではあるものの、まだ無料体験版で十分だ。いやその前に、した覚えがない年間15000円もの契約…かりに、Typekitの単体プランが継続できないから、勝手にこれに移行したとかの理由だとしたら大問題だ。Adobeがまたやらかしたのか、と思い、サポートセンターの連絡先を検索。

その前に、メールでもしかしたら連絡きたのではないか?と思ってメールを検索してみると…来ていた。

Typekit単体プランをご購入になったお客様へ

先日メールでご案内したように、2018年10月15日をもって、Typekitは、Adobe Fonts と名称が変わりました。それに伴い、お使いのAdobe ID でご購入になったTypekitのプランは、本日をもちまして、Creative Cloud 単体 XD プランに移行されました。このプランには、XD の他、14,000 を超えるAdobe Fonts のフォントが全て含まれており、デスクトップの場合、一度にご利用いただける数に制限はありません。また、Webフォントの場合、フォントが使用されるサイトの月間ページビューカウントや、使用できるドメインの数について制限はありません。

お客様のアカウントで CC XD プランがご利用できることは、こちらでご確認いただけます。

一年間のCreative Cloud 単体XDプランの有効期間終了後は、このプランを更新するか、あるいは、どれでも別のCreative Cloud有料プランをお選びいただければ、Adobe Fonts を継続してお使いいただくことができます。

さらにご質問がありましたら、adobe.comまでお問い合わせください。

Adobe Type チーム

早合点でした。すみません。

残念ながらXDはあまり使う機会がないと思うので、期間終了後はとりあえず、Photoshopの単体プランを契約しようと思う。それまで、XDを入れてみていろいろいじってみよう。

脱Adobeは可能か

Adobe CCの規約が一方的に変更になった問題。

https://internet.watch.impress.co.jp/docs/yajiuma/1184042.html

要約すると、AdobeCCに契約していれば過去のバージョンのソフトもインストールできる、という内容だったのが、いきなり、事前通告なしに「直近3世代までのバージョンのみ」インストールできる仕様になった。それ以前のバージョンは権利上の問題で、使用し続けると訴訟の対象になるとか。一見すると問題はなにもなさそうな内容だが、Adobeのソフトの性格上、過去のバージョンが使えないとまずい場面が結構ある。DTPに関しては客先や印刷所の指定するバージョンでの納品が求められる。新しいバージョンは古いバージョンの形式で書き出せるが、再現性が完全でない場合もあり、問題がある。ゆえに、この規約変更は「炎上」した。
事前告知で理由がきちんと説明されていたならまだしも、ある日突然にWeb上で文言が書き換えられたということなので、これは昨今、Adobeのような大企業ではめずらしい悪手だっただろう。

現在、世界中で「デザイン」の仕事をするにはAdobeのソフトが必要になっている。操作性とか機能云々の問題より、客先から求められるから仕方がない。印刷はillustratorなしではデータが作れない。wordでもできるにはできるが、学級新聞レベルが関の山だ。最高に技術を駆使しても、おそらくスーパーのチラシすら作れない。

昔はAdobe独占というわけでもなかった。Pagemakerはアルダスという会社のソフトだったし、IllustratorやPhotoshopのようなソフトはMacromediaとかも出してた。IndesignよりQuarkExpressのほうが優勢だったこともあったと思う。そうしたソフトをAdobeは会社ごと次々買収していって独占に至っているわけだ(Quark社は健在。今も新バージョンを出してる。)。だが競争原理が働かないからなのか、IllustratorやPhotoshopはバージョンCSのころから機能的にほぼ変化がない(と思う)。UIが黒っぽくなった程度か。

AdobeCCがサブスクリプション方式に代わって、ユーザーのシステム維持に支払う金額は高額にはなった。といって、DTPのためのシステム投資は電算写植時代やMac初期に比べれ破格に安い。業務用ソフトなのだから、ある程度の投資はあってしかるべきだ。だが、illustratorやIndesignに限って言えば、昔のバージョンが使えないと仕事に支障をきたす場合がままある。それはAdobeも分かってないはずはないと思うが。ユーザーを殺すような規約の変更はAdobeにとっても得策ではないだろう。かつて日本語組版を牛耳っていた「写研」と重なる。

写研もすばらしい没落ぶりを見せたが、あのとき写植屋もこぞってMacDTPに移行しようとして、ほとんどそのまま潰れた。システムの入れ替えはそう簡単ではないし、一行の写植文字を1000円、2000円で売っていた感覚ではDTPの仕事など取れなかったのだ。

Adobeもユーザーも、謙虚になって回りをよく見て商売しないといけない。

はじめまして

ブログをやってみようと思います。

書くことは、普段の仕事で思うこととか、知り得たこと。僕のようにフリーでデザインの仕事をしようとしてる人にとっては、多少有益な情報になるかもしれません。

僕の仕事は取扱説明書作成が主です。取扱説明書の文章・イラスト・レイアウトすべて請け負っています。最初、印刷会社の写植部門(印刷用の文字を打つ仕事)に就職してから、取扱説明書との関わりは20年以上になります。
今は書籍挿絵やキャラクタデザインを含むイラスト作成、WebのGIFアニメやショートムービーなども請け負っています。
昔からのお客様のほか、Cloudworksなどを通じて新しいお客様の開拓にも勤しんでいます。賛否ありますが、現在の状況ではフリーのデザイナーもクラウドソーシングサービスを積極的に使っていく他、生き残っていく道はないと思います。

僕が就職したのは1992年。バブル崩壊直後の頃でした。それまでのデタラメな価格設定が災いして、多くのデザイン事務所がバタバタと連鎖的に倒産していったころです。もっとも、それはデザイン業界だけのことではありませんでしたが。そのデザイン事務所の下請けだった印刷会社、写植会社も当然影響を受けます。それまで、写植機一台あれば独立して十分やっていけたといわれていたのですが、不況に加えてMacDTPの台頭で写植という業種自体があっという間に消えてしまいました。

今でこそ、WindowsでもMacでもPCが一台あり、Adobeのソフトは高いながらも年間5万円程度で買える時代です。モリサワのフォントだけは相変わらずの値段ですが、それでもそれを含めても初期投資は100万円いかないでしょう。システムが一系統だけでは業務に支障が出ますから、バックアップを準備してもやはり100万円まではいかないと思います。写植機は一台700万円、初期のMACのシステムでもその半分程度だったため、個人でデザイン業を始めるのはハードルが高かったといえます。そのため、デザインの値段はデザイナーの言い値が通っていました。
しかし今では、デザインの勉強をするなり、センスを持っている人なら誰でも始められます。成果物のレベルが同じなら、価格は昔より下がって当然です。イラスト1コマ100円などは論外であるものの、3000円程度なら十分で、あとはより速く正確に仕上げる技術を身につけていくしかありません。(写植屋時代、電算写植機で簡単な地図を一点描くだけで10000円という相場でした。電算写植機(サイバート)ではすでに、illustratorで描くのと技術的な難度は変わりませんでした。)

これから在宅でデザインの仕事を始めたいと思う人や、他の事業をしていてデザインの発注をしたいと思っている方に、役立つことが書けたら良いなと思います。