Adobe CCの規約が一方的に変更になった問題。
https://internet.watch.impress.co.jp/docs/yajiuma/1184042.html
要約すると、AdobeCCに契約していれば過去のバージョンのソフトもインストールできる、という内容だったのが、いきなり、事前通告なしに「直近3世代までのバージョンのみ」インストールできる仕様になった。それ以前のバージョンは権利上の問題で、使用し続けると訴訟の対象になるとか。一見すると問題はなにもなさそうな内容だが、Adobeのソフトの性格上、過去のバージョンが使えないとまずい場面が結構ある。DTPに関しては客先や印刷所の指定するバージョンでの納品が求められる。新しいバージョンは古いバージョンの形式で書き出せるが、再現性が完全でない場合もあり、問題がある。ゆえに、この規約変更は「炎上」した。
事前告知で理由がきちんと説明されていたならまだしも、ある日突然にWeb上で文言が書き換えられたということなので、これは昨今、Adobeのような大企業ではめずらしい悪手だっただろう。
現在、世界中で「デザイン」の仕事をするにはAdobeのソフトが必要になっている。操作性とか機能云々の問題より、客先から求められるから仕方がない。印刷はillustratorなしではデータが作れない。wordでもできるにはできるが、学級新聞レベルが関の山だ。最高に技術を駆使しても、おそらくスーパーのチラシすら作れない。
昔はAdobe独占というわけでもなかった。Pagemakerはアルダスという会社のソフトだったし、IllustratorやPhotoshopのようなソフトはMacromediaとかも出してた。IndesignよりQuarkExpressのほうが優勢だったこともあったと思う。そうしたソフトをAdobeは会社ごと次々買収していって独占に至っているわけだ(Quark社は健在。今も新バージョンを出してる。)。だが競争原理が働かないからなのか、IllustratorやPhotoshopはバージョンCSのころから機能的にほぼ変化がない(と思う)。UIが黒っぽくなった程度か。
AdobeCCがサブスクリプション方式に代わって、ユーザーのシステム維持に支払う金額は高額にはなった。といって、DTPのためのシステム投資は電算写植時代やMac初期に比べれ破格に安い。業務用ソフトなのだから、ある程度の投資はあってしかるべきだ。だが、illustratorやIndesignに限って言えば、昔のバージョンが使えないと仕事に支障をきたす場合がままある。それはAdobeも分かってないはずはないと思うが。ユーザーを殺すような規約の変更はAdobeにとっても得策ではないだろう。かつて日本語組版を牛耳っていた「写研」と重なる。
写研もすばらしい没落ぶりを見せたが、あのとき写植屋もこぞってMacDTPに移行しようとして、ほとんどそのまま潰れた。システムの入れ替えはそう簡単ではないし、一行の写植文字を1000円、2000円で売っていた感覚ではDTPの仕事など取れなかったのだ。
Adobeもユーザーも、謙虚になって回りをよく見て商売しないといけない。